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足趾切断Q&A

足趾切断Q&A

切断は患者様にとっては重大な決定です。治療のどの時点で切断の判断をしなければいけないのかは、医療従事者にとっても大変重要な決定事項です。

足趾切断Q&A

Q1. 足趾切断をする際の基本的ルールは?
米国におきまして、現時点での代表的な文献は以下になります。
How to Determine the Appropriate Level of Amputation
Kathleen Satterfield, DPM
Podiatry Today ISSN: 1045-7860 Vol. 18, Issue 1, January  2005: pages: 59-66
基本的に足趾は手指とは異なり、機能性は少ないです。バイオメカニクス上での足趾の主な機能は、足の位置を脳へ送り、歩行中・立位中のバランスの補助をするproprioceptionという機能がメインとなります。よって、大げさに言えば、足趾を完全に切断しても、人間は十分に歩行可能であるということです。
形成外科では、手指が外傷などで欠損した場合、足趾を切り取って移植をする、という手法がご存知かと思います。 同時にTMA切断後も、切断部が完治し、適切な足底盤や簡易なAFO(短肢装具)さえあれば、殆どの患者様は普通に歩行することが可能です。
Q2. 1本でも足趾は残すべきなのか、今後潰瘍再発の可能性が高ければ、足趾は全て切除すべきなのか?
足趾を中途半端な状態で温存し、骨髄炎や潰瘍発生の可能性が高い場合は、思い切って切断するのも一案ではあります。
ある年のDF Conference(糖尿病性足病変カンファレンス)へ参加したエキスパート・パネルの意見によると、骨髄炎は常に外科疾患であり、足趾に骨髄炎があると再発率がとても高いということを考慮すれば、抗生剤だけではなく、外科的手法により骨髄炎部を徹底的に切除することが重要とのことで話がまとまりました。
この議論の中心になったミシガン大学の文献は:
Osteomyelitis of the foot and toe in adults is a surgical disease: Conservative management worsens lower extremity salvage.
Henke PK, Blackburn SA, Wainess RW, Cowan J, Terando A, Proctor M, Wakefield TW, Upchurch GR Jr., Stanley JC, Greenfield LJ.
Ann Surg. 2005 Jun: 241(6): 885-92; discussion 892-4.
治療の概念としましては、第1~5趾のうち、第1MP関節が足先の50%、第2~5MP関節が残りの50%の体重を支えます。 よって第1MP関節は比較的重要で、第1趾を残した場合は踏ん張りが効く事から、それを残して装具を工夫したほうが歩行にメリットがあるという考えはあります。同時に、第2、3、4趾と中途半端な足趾が1本残るのなら、再発リスクも高く、装具の工夫も困難にて切除したほうが良いとも言えます。
しかしこの考えも患者様のADLや希望により異なりますので、一概に決められるものではありません。ありません。 ただ、足趾1本でも残して欲しいというご希望で、それが可能な場合、選択としては第1趾及び第1MP関節を残すことが最もメリットが高いと言えます。
Q3. 遠位側の中足骨頭と基節骨の間で切離する場合の遠位側の中足骨頭の処理はどうすべき? そのままにしておけば肉芽形成は不良になり治癒が長引くが、残して再建したほうが荷重の点では良いのか?
基本的には、血流が良く、感染がなければ創傷は自然に治るはずですが、例えば中足骨が突き出ているなどの場合は、人間の体はこれをForeign Body(異物)とみなす可能性もありますし、治癒が数ヶ月も長引くとの判断でしたら、創傷を早く治癒させるために、この骨を犠牲にすることも考えられます。
一般論としては、足趾が感染、もしくは壊死してアンプタが必要な場合、大部分のケースでは感染を除去するのが目的で、中足骨の頭も切断することになると思います。
逆に、感染や壊死が足趾の先端のみの場合は、MP関節で切断し、中足骨を残すことも可能です。 理想的に言えば、どの位置で切断すれば良いのかという議論には「足(下肢)を残せられれば、残せるほど機能的に良い。しかし、治癒の即効性を考えると、心臓に近い位置(proximal)で切断するほど治癒は早い。」というジレンマがあります。
手術の技術的難易度の話としても、BKAやAKAは簡易で1時間以内で済みますが、下肢を残すためのTMAやサイム切断は1時間以上かかることも良くあり、合併症の可能性も高いという問題もあります。
その他はケースにより異なると思います。心がけるべきことは、患者のゴールと期待、また現実的なリハビリの可能性など、全てを考慮した上で、問題の足趾を残す・残さないの判断をすることです。