糖尿病 潰瘍 足

MRI|メインビジュアル
MRI

MRI

MRIの読解をマスターすることは大変重要なことで、MRIによって治療方針を決めることができるようになります。

MRI

Janet Cochrane Miller, D. Phil, Susanna I. Lee, M.D., Ph.D.

同一患者のMR画像
  • T1強調画像による骨髄の低信号(矢印部分)。骨髄炎と結びついた浮腫によるもの。
  • T2強調画像による骨髄(実線矢印)、皮膚潰瘍(三角の矢頭)、軟部組織(点線矢印)の高信号。
MRI は骨髄の異常、そして皮質骨破壊、蜂窩織炎、膿瘍、ポケットなどを探知するため、骨髄炎には最も有効な手段となっている。
骨髄炎の一次所見には、T1強調画像における低信号、T2強調画像における高信号、骨髄への造影剤注入後の画像強調などがある。
しかしながら骨髄炎のもっとも高いPPV(陽性反応的中度)を示すのは、皮質骨断裂、皮膚潰瘍、骨髄の異常信号を認める箇所に近い部分のポケットなどの二次所見である。これらの特異な基準が無ければ、骨髄拒絶反応、神経障害性関節症、ストレス反応など、骨髄炎の画像所見と似通ったものを骨髄炎と偽陽性診断する可能性があるからである。
これらのコンディションは糖尿病患者において特に一般的で、骨髄炎とも並存することがあるため、的確診断を更に困難にしている。
骨髄炎診断における画像診断法の感度及び特異度の範囲
画像診断法感度特異度
単純レントゲン60 % (28 – 93)66% (50 – 92)
99mTc three phase 骨スキャン*70 – 90 %38 – 79 %
111 In Oxyquinolone 白血球スキャン80 – 100 %70 – 90 %
MRI 88 – 99 %83 %

* の方法では最高値と最低値を除外している。

糖尿病足における画像診断: MRI

T. Learch, A. Gentili
RI 検査プロトコル
足部の画像診断法
糖尿病足における画像診断では、横断面(Axial)、矢状断面(Sagittal)、冠状断面(Coronal)の3方向の画像が必要とされる。 足部主要面の分類において混同を避けるために、横断面を長軸面、冠状断面を短軸面ともされる。
画像を明瞭にするため、広範囲の画像化は避ける。 画像の解析は患者個々のニーズに合わせる。
足部の包帯等ははずし、肉眼でも状態を観察する。骨髄炎は潰瘍のそばに発症するため、この部分をはっきりと区別し、画像化する。浅い潰瘍は画像に映りにくいため、潰瘍の上にマーカーを置いて印を付ける。
問題があると思われる部分を含んだ画像化範囲を選択する。 一般的に足趾の感染や、中足骨部分の潰瘍を評価するために前足部と中足部を画像化の範囲に入れる。 踵骨にかかる潰瘍がある場合は、距骨下関節、足首、中足部を範囲に入れる。 小さな趾節骨まで適切に描出させるために、広範囲の画像化は避けるべきである。
アラインメントの変形がある場合、検査技師はその問題箇所の画像を明瞭になるようにスライスする。
例えば外反母趾の場合、1趾の骨髄炎検査が必要であれば、足の趾節骨に沿って矢状断面にスライスする。問題箇所が基部側であれば、第1中足骨に沿って矢状断面にスライスする。
T1 強調画像
自動的に高解像の画像化。骨髄の変化に対して感度が良い。 しかし小さな趾節骨の骨髄の浮腫を見逃しやすい。
T2 強調画像
骨髄浮腫に対する感度が(特に骨髄浮腫と脂肪骨髄の高信号が混合した場合にファーストスピンエコー法を用いる時に)低い。 T2に脂肪抑制法を併用することでこの問題は避けられるが、足部に一定の脂肪抑制を行うことは困難であり、不均一な脂肪抑制は誤診に繋がる。
STIR 法
骨髄浮腫の変化に非常に高度な感度を示す。一定の脂肪抑制が容易である。
ガドリニウム含有の造影剤静注は通常必要とされないが、小さな膿瘍やポケットに対する感度を高める。

膿瘍

画像診断において膿瘍の形成は最も注意すべき項目のひとつである。 糖尿病にとって排出されない膿の存在は放置できない問題であり、糖尿病足を救うには膿瘍のドレナージが非常に重要である。
膿瘍の評価に最も適した画像診断法がMRI である。T2 及びSTIR 法の画像で液体の存在を容易に確認することができ、静注の造影剤が必要なことはほとんどないが、時にケースによっては造影剤使用が役立つこともある。
核医学は軟部組織の分析能力が限られているため、糖尿病足の評価に使用するにはその有効性は非常に限られたものである。
上図は55 歳男性の糖尿病患者。
(A) 核医学骨スキャンによって前足部に骨髄炎に良く見られる異常なトレーサーが描出されている。
(B 及びC) 長軸及び短軸のSTIR 法画像によって、前足部に多発性の骨髄炎に見られる骨髄の異常信号及び足底軟部組織に膿瘍が描出されている。
(D)ガドリニウム造影剤静注後、脂肪抑制を伴う短軸のT1 強調画像によって、膿瘍末梢側に典型的な軟部組織の強調画像が描出されている。
糖尿病足に対するMRI 所見において、T2 及びSTIR シーケンスの信号変化により最も多く見られるのは軟部組織の浮腫及び炎症である。 軟部組織の浮腫性変化が良く見られる箇所は、足底前足部の足底腱膜より少し奥に入った部分、及び足背部である。 これら所見は必ずしも炎症や蜂窩織炎と相関関係にはあらず、又その部位に感染の臨床的疑いが無い患者においても偶然発見されることもある。そのような所見の原因は、非特異性の浮腫性変化や心原性と思われる。 しかしながらこれらの部位における異物、潰瘍、膿瘍、骨髄炎の存在は詳細に検査しなくてはならず、細胞的変化の検査識別は依然重要である。

上図は58 歳男性の糖尿病患者。
右足の短軸のSTIR 法及び矢状断面のT1 強調画像において、足背部の軟部組織に浮腫が見られる。
しかしその下の骨における骨髄の信号は正常である。

骨髄炎

MRI は骨髄炎の位置と範囲を正確に描出することができる。
骨髄炎の主要徴候には以下が含まれる:
骨髄の信号変化。T2 及びSTIR 法においては高信号、T1 強調画像においては低信号となる。T1における信号変化は、特に小さな骨において容積効果により変化を見落とすことがある。
皮質骨の断裂。このごく一般的なレントゲン写真で見受けられる徴候も、MRI での診断の方がトモグラフィックを使用するという点からしても、より正確である。 骨周囲の軟部組織浮腫。
その他の骨髄炎徴候:
潰瘍とポケットの形成。 潰瘍が大きく深いほど、骨髄炎につながりやすい。
膿瘍の形成。 軟部組織膿瘍は、その付近に骨髄炎のある可能性が高い。
52歳女性の糖尿病患者で第1趾足底部に潰瘍あり。矢状、長軸、短軸のSTIR画像を見ると、第 1趾の基節骨及び末節骨に(矢状及び短軸面で見られる潰瘍の付近に)骨髄炎が描出されている。 又、第1中足骨の骨髄の信号は明らかに正常である。
あらゆるタイプの足部切断術を受けた患者には全て、術後の経過観察として画像診断を行うべきである。これによりその後、骨髄炎の残存や、骨の破壊的変化が起きていないか確認することができる。
術後のレントゲン撮影は、軟部組織による断端のカバー及び断端部を評価する。骨の切断端はきれいな形をしていてスムーズであるべきで、先端がぎざぎざであると、軟部組織が崩壊するリスクを増大させる。
切断足部のMRI 撮影は、血清腫や膿瘍などの軟部組織の異常だけでなく、骨髄炎の残存又は再発の確認にも役立つ。
72 歳男性の糖尿病患者で、前足部切断の術後。PA方向からのレントゲンにて、尖った骨片が軟部組織断端に突き出しているのが描出されている。これは皮膚が損壊するリスクになる。
64歳女性の糖尿病患者。連続のPA画像に第1趾列及び第2趾列の骨髄炎進行が見られる。 1枚目のレントゲンは第1 趾の切断後に撮影。 2枚目は術後8ヶ月目に撮影されているが、第1中足骨断端及び種子骨に破壊的骨髄炎の進行が見られる。又、第2中足骨頭及び第2基節骨の骨髄炎を伴う第2MTP 関節の化膿性関節炎がある。
矢状断面のSTIR 画像で第1趾列を見ると、断端の軟部組織内に膿瘍、又、断端及び種子骨に骨髄炎が見られる。
64歳男性の糖尿病患者。 軟部組織の感染部分を外科的デブリードメントにて切除。その後フォローアップで撮影した短軸面のSTIR画像を見ると、軟部組織の切除範囲が確認できる。隣接する中足骨は骨髄炎も無く正常である。
40歳男性の糖尿病患者。 5ヶ月前に第4趾列の切断。 最新のレントゲン写真を見ると、前足部に術後の変化に加えて広範囲の多発性骨髄炎が確認できる。短軸面のSTIR画像においては、骨髄炎に加えて膿瘍の形成も確認できる。
糖尿病患者における化膿性関節炎は通常、骨髄炎が隣接する関節内に広がって発症するが、時には外傷が関節内に浸透して発症することもある。関節腔は狭くなり続いて関節滑液浸出を伴う破壊が起こる。化膿した関節液は腱鞘など隣接する組織に伝わる。
55歳男性の糖尿病長期罹患患者。 足首後面と後足部に潰瘍があり、足首に著明な腫脹あり。
矢状断面のSTIR画像を見ると、足首関節滑液と前・後脛骨遠位、前・後部距骨、踵骨表面で骨髄浮腫が確認できる。これらは保護的役割をする関節軟骨が終わる部分の足関節がむき出しの状態を示している。これらは炎症や感染性関節症などの骨髄変化信号を最初に描出する場所である。
  • 化膿性脛距関節症患者の矢状断面によるSTIR 画像。 関節液が長趾屈筋腱に伝わって基部で切断され、筋肉の腹部に膿瘍を形成している。
  • 関節部吸引後の関節造影を見ると、腱鞘部分のコントラストに加え、内側にポケットが確認できる。
ポケット
ポケットはMR 画像によって最も明らかに描出される。しかしながら微小なポケットは発見が困難であるので、検査技師は皮膚のどこから浸出液があるのかを確認し、これらの位置にマーカーを置いて検査の精度を高める必要がある。 より微小な膿瘍やポケットの検出には、ガドリニウム造影剤を静注してT1 強調画像を用いると、より精度の高い検査ができる。
短軸面のSTIR画像及び、ガドリニウム造影剤静注後脂肪抑制を伴うT1強調画像の両方が足背部の膿瘍及びそれに関連するポケットの形成を描出している。 ガドリニウム造影剤静注後脂肪抑制を伴うT1強調画像の矢状断面は膿瘍だけでなく、骨皮質上部の崩壊を伴う基節骨の骨髄炎を描出している。
52歳女性の糖尿病患者で、第1末節骨に骨髄炎あり。短軸面のSTIR画像を見ると、末節骨から足底部の皮膚エリアに流れる液体がポケットに溜まっているのが確認できる。
57歳男性の糖尿病患者。 STIR画像によるAの矢状断面を見ると、踵骨隆起部に浅い潰瘍があり、骨炎と初期の骨髄炎に結びつく骨皮質の軽微な炎症が確認できる。 フォローアップで矢状断面のSTIR画像(B)及びT1強調画像(C)が4ヵ月後に撮影され、骨髄炎の著明な進行が確認される。軟部組織に隣接するポケット内のガスと膿に注目されたい。
56歳男性の糖尿病患者。 (A)は矢状断面のSTIR画像で、踵骨下部に骨髄炎に繫がる浮腫が確認できる。 (B)は6週間の抗生剤療法後に撮影された同じく矢状断面のSTIR画像で、踵骨は正常であり、治療が成功したことが確認できる。