糖尿病 潰瘍 足

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足背・足首・足底動脈バイパス:文献紹介

足背・足首・足底動脈バイパス:文献紹介

下肢に虚血のある糖尿病患者を救うために、足背・足首・足底動脈へのバイパスが行われています。 今回はその文献をいくつか紹介します。

足背、足首、足底動脈バイパス

Aulivola B, Pomposelli FB
Division of Vascular Surgery, Beth Israel Deaconess Medical Center, Harvard Medical School, Boston, MA 02215, USA.
下肢に虚血のある糖尿病患者を救うために足背・足首・足底動脈へのバイパスが行われている。
このレビューの目的はこのような末梢血行再建術に関する指示、技術、結果をまとめたものである。
レビューしたのは足背(n=1032)、足首(n=21)、足底(n=77)である。
足背・足首・足底へのバイパスは、より近位のバイパスターゲットの選択がない虚血下肢の救済に重要である。
術前死亡率が許容範囲(1%以下)なら踝下のバイパスが可能である。
これら末梢バイパスが下肢切断の代替手段となりうる事を、下肢救済率及び開存率が証明している。
患者選択、詳細あ術前準備と綿密な手術の技術はこれら動脈血行再建を成功させるための重要な役割を果たす。

足背バイパスにおける10年の経験:1000件以上の成果分析

Pomposelli FB, Kansal N, Hamdan AD, Belfield A, Sheahan M, Campbell DR, Skillman JJ, Logerfo FW.
Division of Vascular Surgery, Beth Israel Deaconess Medical Center, Harvard Medical School, Boston, MA 02215,
USA.
目的:
本スタディの目的は、糖尿病患者における虚血の下肢救済のための足背バイパスにおける我々の過去10年にわたる経験をレビューするものである。
手順:
当スタディは電子化した血管系の記録とカルテを遡及分析した。
1990年1月1日より2000年1月11日までに865名の患者に1032件の足背バイパスが行われた。(その期間中3731件の下肢動脈バイパスの27.6%を実施。)
597名(69%)の患者は男性で平均年齢は66.8歳、そのうち92%は糖尿病患者で、全ての手術は下肢救済目的であった。 使用されたグラフトは順行性伏在静脈が317件(30.7%)、in situが273件(26.4%)、逆行性静脈が235件(22.8%)、腕部静脈が170件(16.5%)、その他静脈が35件(3.4%)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が2件(0.2%)であった。
流入先動脈は総大腿動脈が294件(28.5%)、膝窩動脈が550件(53.2%)、浅大腿動脈が114件(11%)、その他が74件(7.2%)であった。
結果:
術後1ヶ月以内の死亡率は0.9%で同じ期間に42件(4.2%)のグラフトが失敗したが後に13件は再建に成功した。
1~120ヶ月(平均23.6ヶ月)間のフォローアップにおいて手術5年後の1次開存率、2次開存率、下肢救済率、患者生存率は56.8%、62.7%、78.2%、48.6%、10年後においてはそれぞれ37.7%、41.7%、57.7%、23.8%であった。
PTFEの2件は両方とも1年以内に失敗。1次開存率は女性患者における成功率がより低かった(5年後での成功率は女性46.5%、男性61.6%:P<.009)が、糖尿病患者では成功率が高かった(糖尿病患者65.9%、非糖尿病患者56.3%)。
浅大腿動脈は5年後の2次開存率が67.6%に対し他が46.3%(P<.001)と優れていた。
多変量解析を見ると、入院日数10日以上及び以前グラフト閉塞した患者の1年後の開存率はより低いと推測でき、伏在静脈のグラフト使用の開存率はより高いと推測できた。
結論:
足背動脈バイパスは虚血の下肢救済に長期の耐久性を保つ。使用するグラフトは可能であれば伏在静脈が望ましい。
50%以上のケースでは末梢で流入のある箇所からの短い静脈グラフトが可能である。
これらの結果は虚血性足病変のある糖尿病患者の足部動脈血行再建に足背バイパスをルーチン化させることを正当化するものであると言える。

末期腎不全の糖尿病患者における下肢バイパスに実施価値はあるのか?

Georgopoulos S, Filis K, Vourliotakis G, Bakoyannis C, Papapetrou A, Klonaris C, Papalambros E, Bastounis E.
Division of Vascular Surgery, First Department of Surgery, University of Athens Medical School, Athens, Greece.
背景/目的:
慢性腎不全(ESRD)の患者における生命に関わる虚血は難しい治療である。その上糖尿病は虚血壊疽、長期の感染、難知性創傷を伴う。 本スタディは下肢の重大な虚血治療にバイパスを実施したESRD及び糖尿病患者におけるグラフト開存率、下肢救済率、生存率を調査したものである。
方法:
糖尿病及びESRDの患者39名における8年間56件の動脈血行再建術を遡及分析。 バイパスの目安は虚血性の安静時疼痛(n=13)、不治癒潰瘍(n=18)、足部壊疽(n=25)で、外科罹患率、死亡率、切断率、グラフト開存率に関係するリスク因子を評価。
結果:
34名は血液透析で、5名は腹膜透析患者であった。49件の下ソケイ部血行再建が行われ、その下肢動脈バイパスの位置は、膝下膝窩動脈(n=22)、前脛骨動脈(n=12)、後脛骨動脈(n=8)、腓骨動脈(n=22)。 また7件の腋窩大腿動脈血行再建も行われ、その下肢動脈バイパスの位置は、総大腿動脈(n=5)と膝上膝窩動脈(n=2)。 30日後の術後死亡率は18%(7名)、平均フォローアップは11.5ヶ月間(範囲は1~93ヶ月)、患者生存率は1年後63%、2年後45%、1次開存率は1年後64%、2年後58%、下肢救済率は最初の年で65%であった。
結論:
ESRD及び糖尿病患者の生存率減少に関わらず、この下肢救済率を見れば血行再建という積極的処置が価値あるもので あると言える。